中国 CHINA
香港中国情報源

フリーランスライター 深川耕字

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中台トップ会談の意味

記載日:2015.11.06

米軍パワーが再構築

11月7日から習近平中国国家主席はシンガポールを公式訪問。台湾の馬英九総統と会談する。両岸(中台)指導者が会談するのは1949年以来、初めて。シンガポールが会談場所となったのは歴史的、現実的理由があるからだ。シンガポールの親中系学者らは「両岸関係の前進は必然的流れ。一つの中国の原則と92年コンセンサスを明確にすることが両岸指導者の直接交流を定例化する基礎になる」と見ている。(深川耕字=2015年11月6日記)

 1993年、シンガポールで両岸の窓口機関トップが会談した会議室は改築工事で姿を消したが、シンガポール政府にとって、建物自体は依然、両岸関係を取り持ったシンボルとされている。

 1993年の両岸窓口機関トップの会談で直接対話のルートが開かれた。その後、紆余曲折があったが、対話と交流を進める姿勢は両岸にとって変わらない。今回、両岸指導者トップ会談の歴史的場所としてシンガポールを選んだのは、歴史的、現実的理由からだ。

 シンガポールの親中系ジャーナリスト、李気虹氏は「こんなに突然、シンガポールで両岸指導者トップ会談が実現するとは予想しなかったことだが、歴史的出来事なのでかなりの期待を集めている。台湾政局がどう変化しようと、両岸指導者が会談することは双方にメリットがあり、一つの中国の原則と92年コンセンサスを堅持できれば両岸指導者会談を定例化する基礎になる」と分析している。

 シンガポール国立大学東アジア研究所の鄭永年所長は「戦後の日本、台湾、アジア経済は中国が改革開放政策に舵を取る前まで西側の市場に大きく依存していたが、中国台頭後は台湾のみならず、日本、韓国、他のアジア諸国も中国経済と構造的な経済依存関係を持つようになったので、この流れをふまえた方向に進むしかない」と話している。

 米国のカーター国防長官は11月5日、南シナ海で活動している米空母セオドア・ルーズベルトを視察。米国が南シナ海問題で中国と直接対決する構えに出たと分析する声もあるが、南シナ海問題をさらに緊迫化させることは間違いない。
 カーター長官が空母を視察した時、南沙諸島(スプラトリー諸島)から200カイリ離れた場所を航行中だった。米軍は米空母の南シナ海での航行は常態化していると一貫して主張している。しかし、中国側にとっては南沙諸島問題が敏感な時期であることや視察した空母がビックスティック(棍棒)という名の愛称で呼ばれていることから予想以上に騒いでいる。
 
 ビックスティックという愛称の由来は、ルーズベルト元大統領の「大きな棍棒を携え、静かに話す」という座右の銘にある。空母での記者会見でカーター国防長官はこの言葉を引用し、対話に前向きな姿勢を示す一方、今後も同海域で強大な軍事力を持ち続けることも示した。
 
 米空母の航行について中国外務省は5日、「航行の自由を理由に南シナ海の軍事化を進め、さらには他国の主権と安全利益を挑発、威嚇することに反対する。米国が今回、この意図を公明正大にすることを期待する」と述べた。

 中国の王毅外相は6日、米国のケリー国務長官と電話で会談し、習近平中国国家主席の訪米成功を受けて「協力強化し、一連の重要な合意事項を徹底し、両国関係の安定的発展を確実なものにすべきである。これに対する不必要な妨害は望まない。米国艦船の南シナ海での行動は相互信頼を損ない、地域の緊張を引き起こすので中国は強い懸念を表明する。米国が対話協議によって食い違いを抑える正しい道にもどるように促す」と述べた。

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史上最年少の米ハーバード大学教授に就任した尹希氏

記載日:2015.09.27

 習近平中国国家主席が9月22日から訪米し、中米関係の動向が注目される中、中国と米国の学生エリート教育の違いが際立ち始めている。
 中国で生まれ育った“科学者の卵”が飛び級で中国科学技術大学少年班からハーバード大学で物理学博士号を取得し、ついに今月、32歳で同大教授に就任した。

 これまで同大の最年少教授(化学と物理の2分野)は34歳で就任した中華系の才女、荘小威氏で、記録を塗り替えた。
 なぜ、史上最年少で同大教授に就任できたかについて「中国と米国の教育制度の違いが大きい」と指摘。「中国の教育制度の問題は学生に充分な選択肢がないため、天賦の才能が埋もれたままの宝の持ち腐れになる」と手厳しい。

 小学2年生の時は週末、囲碁や絵画を楽しみ、母親に連れられて公園で大自然に触れ合う伸び伸びとした生活だったという。
しかし、当時、父親の大学テキストを手にして学び始めてから、微分積分や量子力学を一通りマスターし、才能を見出したという。
 わずか12歳で大学受験して572点を獲得し、中国科学技術大学少年班に入学。飛び級による大学生になった。

 中国で少数精鋭のエリート教育となっている中国科学技術大学少年班制度について「一部の生徒に多くの進学選択肢を与えているが、成長の規律を乱すだけで科学的根拠がない。中国の教育制度の致命的な問題点だ」と語る。
 一部で「神童」と評されることについて「中傷されているように感じる」「嫌がらせを受けず、不要な浪費時間がなかったために専門分野に専念できただけだ」ときっぱり否定している。

■ 1983年12月生まれ。93年、北京第八中学特進実験班に入り、96年、中国科学技術大学少年班に入学。01年に中国科学技術大学本科(5年制)を卒業。奨学金で01年に米ハーバード大学物理学博士課程に入り、06年に博士号を取得。08年、ハーバード大学物理系の副教授となり、15年9月、同大教授に就任。(深川耕字=9月27日記)

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浙江省のキリスト教弾圧どこまで 中国

記載日:2015.09.13

習国家主席訪米でも溝

中国では当局が認めたキリスト教組織信者約2000万人以外に1億人とも見られる地下教会信者が厳しい弾圧にさらされている。とくに地下教会信者の多い沿海部の浙江省では数年前から教会の十字架を強制撤去したり、教会を撤廃するなど地下教会の取り締まりが厳しさを増す。習近平中国国家主席の訪米でオバマ大統領と人権問題も主要議題として会談する見通しだけに、ウイグル族のイスラム教、チベット族の仏教の活動を制限する動きも含め、動向が注目される。(深川耕字=2015年9月13日記)

波紋呼ぶ十字架強制撤去 ― 支援弁護士ら軟禁監視下に

 浙江省内での当局によるキリスト教会の十字架強制撤去は今年に入って激化し、香港誌「亜洲週刊」によると、昨年来、全省で二千近い教会の十字架が強制撤去され、阻止しようとした信者たちが抵抗し、大きな抗争に発展するケースもある。

 浙江省当局が十字架撤去行動を始めたのは13年末ごろからだ。「三改一折」行動の名目で教会の違法建築部分を撤去し、今年3月の全国人民代表大会(全人代=国会)で中国カトリック愛国会の孟青禄副主席(司教)が声明を発表し、中央が浙江省に十字架強制撤去を指示しているという。

 「中国のエルサレム」とも称される浙江省温州市では、従来、教会の屋根の上に十字架が掲げられるのが日常的だったが、当局は徹底して強制撤去行動を展開。浙江省では政府認可の教会であっても十字架を教会建築物の最も高い場所に掲げることは禁止され、低い場所の壁に埋め込むよう命じられている。

 これに対して信者たちは市内至るところに十字架を掲げる運動を起こして対抗し、自由民権派弁護士の張凱氏が中心となった団体が「教会人権マニュアル」を作成。浙江省当局がキリスト教徒に対して「五進五化(宗教施設の健全運営化)」政策を名目に十字架を強制撤去しようとする動きに抵抗してきた。

 しかし、張凱弁護士と助手の劉鵬氏は8月25日、温州市内で当局に社会秩序騒乱罪などの容疑で拘束され、六ヶ月間の居住監視による軟禁状態となっているという。張凱弁護士はキリスト教徒で浙江省でのキリスト教会弾圧が本格的に始まった昨年から拘束された牧師の弁護人となり、三十人余の弁護団を結成して教会での信仰の自由を支援し、破壊された教会の国家賠償申請や担当政府役人の罷免を求めていた。

 米国務省の「宗教の自由」を担当するサパースタイン大使は8月25日、中国4カ都市を訪問する中で張凱氏とも面談する予定だったが、その直前に当局から拘束された形だ。米国政府は1日、中国当局が拘束した張凱氏を含む民主派弁護士や宗教活動家を釈放するように要求している。

全国に先駆け、浙江省がキリスト教会弾圧を激化させたのはトップの判断が大きい。キリスト教会を党の統治に対して潜在的脅威になり得る社会の不安定要素と見る浙江省トップの夏宝龍党委書記は、昨年から省内のキリスト教会に掲げられる十字架を強制撤去するよう指示。地元信者たちの猛反発を招いた。

 夏党委書記は天津出身で天津市副市長を歴任した後、03年に浙江省党委副書記となり、当時、浙江省トップだった習近平氏を支える側近で党中央委員でもあるエリート党幹部。浙江省でのキリスト教会弾圧の動きは全国に波及すると危惧(きぐ)されている。

 台湾紙「自由時報」や現地メディアなどの情報によると、当局が浙江省内のキリスト教会を撤廃したり、十字架を強制撤去する動きが激化し、8月5日、温州市北白象鎮の教会では十字架が強制撤去された上に燃やされ、遺棄された。同省金華市内の聖愛教会では十字架撤去に反対して抵抗した信徒少なくとも7人が公共秩序騒乱容疑で当局から拘束され、牧師も信徒からの収賄嫌疑で拘束されているという。抵抗する信徒が当局によって拘束されるケースは1000人を超えているとの報告もある。

 中国当局としては政府公認の天主教愛国会や三自愛教会以外の非公認教会は「家庭教会」と称して邪教と断じており、教会を破壊して強制撤去したり、信仰のシンボルである十字架を破壊し、教会内に党委員会の担当を常駐させて監視するなど弾圧が過激化している。

 カトリック香港教区の陳日君枢機卿は同問題について「中国大陸では地下教会は認めないし、表面に現れる教会活動は信仰に基づく真の自主権がない。宗教の自由は得られておらず、真の自由とは程遠い」と批判している。

 中国の習近平国家主席は国賓として23日に初めてワシントン入りし、25日、オバマ米大統領とホワイトハウスで会談する。主要議題の一つとして中国民主派弁護士らへの弾圧問題が協議されるが、どこまで踏み込んで改善されるか未知数だ。習国家主席の訪米は2013年6月にカリフォルニアへの実務訪問に次いで二度目。人権問題については米中間で見解の相違があり、米国側の厳しい指摘があっても溝が残りそうだ。

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3年ぶりにバチカン承認の中国司教に就任した張銀林神父

記載日:2015.08.16

 8月4日、中国で約3年ぶりにローマ法王庁(バチカン)が承認する司教が就任する儀式が河南省安陽教区で行われ、バチカンが承認する神父として司教に就任した。

 同儀式は安陽教区の張懐信司教(90)が主礼となり、中国政府が管轄する中国カトリック愛国会副主席や江蘇省海門教区、徐州教区、山東省周村教区の各司教も同席。75人の神父、120人の修道女を含め、1500人が参加して司教就任を祝福した。
 中国の国家宗教事務局も、儀式は政府公認団体の規定に基づいて挙行されたと発表し、中国政府公認の司教誕生を認めた形だ。

 儀式終了時、「私のような弱き者を神がお選びいただき、感謝感動している。恩寵が皆様に等しく注がれますように」と述べ、バチカン公認の司教として就任することに深い自負を持つ。
 安陽教区は1882年からカトリック河南教区のエリアとなり、1884年に正式に教区エリアに認められる古い歴史を持つ。1953年には安陽教区となった。

 バチカン承認の司教誕生は、国交がないバチカンとの関係改善の兆しとの見方が出ているが、国交樹立への道は前途多難だ。政府非公認の教会取り壊しなど弾圧も続いている。

 習近平政権は体制維持のために、地下教会活動を行っているキリスト教への弾圧、締め付けを強化。中国カトリック愛国協会の孟青禄副主席は全国人民代表大会(全人代=国会)で各地の教会にある十字架を撤廃する動きを加速させ、ネット上でも「雷に当たりやすく危険」との意見も出ており、とくに浙江省では十字架が撤去されたり、燃やされる事件が相次いでおり、十字架撤廃論争の行方も注目されている。

■ 1971年4月、河南省林州生まれ。96年、中国カトリック神哲学院卒業後、11年に河南省カトリック教務委員会副主任。13年に河南省第十二期全国政治協商会議(政協)委員となり、15年4月29日に挙行された河南省安陽教区司教選挙で38票の賛成、4票棄権により司教に当選。44歳。(深川耕字=2015年8月16日記)







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● プロフィール ●

深川耕字 (ふかがわ・こうじ)

福岡県生まれ。筑波大学第一学群人文学類卒業後、新聞記者を経てフリーランスライター。1997年から10年以上、香港駐在し、中国各地や台湾、マカオなど頻繁に現地取材。一般社団法人・全国教育問題協議会理事。

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