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フリーランスライター 深川耕字

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民主派結束乱れ親中派優勢 香港

記載日:2015.10.04

雨傘運動1年、焦燥感強く

香港の学生団体ら若年層が選挙制度の民主改革を求めて主要道路を79日間占拠した「雨傘革命運動」開始から9月28日で1年を過ぎた。中国政府の香港への締め付けが強化され、民主派は穏健派と急進派で路線対立し、11月の区議会選挙では親中派が漁夫の利を得てやや優勢。民主派は態勢立て直しを迫られ、天王山となる来秋の立法会(議会70議席)選挙で現有議席を維持できるか、親中派の包囲網に押されかねない情勢だ。(深川耕字=2015年10月4日記)

区議会選で親中派が漁夫の利 ― 本土客排除の動き、観光も打撃

 香港民主化を求めた昨年の大規模デモ発生から1年となる9月28日午後5時58分、香港島の金鐘(アドミラリティ)の政府本部庁舎前には1000人以上の市民らが集まり、デモのシンボルだった黄色の雨傘を一斉に広げて黙祷した。

 警官隊が87発の催涙弾をデモ参加者に浴びせ始めた一周年の同時刻は「雨傘運動が非暴力による政治意識を覚醒させ、無駄ではなかったことを反芻(すう)する一刻」(雨傘運動提唱者の一人・戴耀廷香港大学副教授)だが、途中から理想主義に偏重する学生主導に変わり、10月下旬に行われた政府との直接対話が一度で挫折したことへの反省点もかみしめながら「真の普通選挙」実現まで民主化運動の継続を固く誓った。

 警官隊が幹線道路沿いに鉄柵バリケードを設置し、3000人態勢で警戒する中、一部の急進派は87分間、幹線道路を占拠しようとバリケード越えを試みようとしたが、制止する警官隊とにらみ合い、大きなトラブルはなかった。

 同日、雨傘運動による幹線道路占拠デモに反対する親中派グループは約200人が香港警察本部のある湾仔(ワンチャイ)までデモ行進し、占拠デモが香港の経済と法治を損なったと非難した。

 昨年8月末、中国の全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員会が2017年の香港行政長官選挙で民主派の立候補を実質的に排除する普通選挙案を提出したことに猛反発した民主派、とくに若者たちは昨年9月28日から幹線道路を占拠して座り込みを始めた。当時、香港政府庁舎前などで学生らが多数のテントを張り、週末には数万人規模のデモが繰り返し展開され、民主派の熱気は拡大。参加者数は最大で20万人規模まで膨張した。

 しかし、昨年12月15日に警官隊が強制排除を執行するころには、生活に支障が来すとの声もあり、市民の反応は冷め、民主派は一部に香港独立や本土主義(中国本土排除主義)を掲げる急進派が新結成され、路線対立を生じて閉塞感と焦燥感が強まっている。

 6月、全人代の案に沿った選挙制度改革案は香港立法会で否決(賛成8票、反対28票)され、「ニセの普通選挙改革だ」とする民主派の主張が予想を大きく上回る反対多数で勝利し、民主派に安堵感が漂った。しかし、次回選挙は従来通りに実施されるため、選挙制度改革のやり直しを求める民主派議員らの意向に、メンツを失った中国政府、香港政府は応じる構えを見せない。

 むしろ、香港基本法(ミニ憲法)や一国二制度について、主権はあくまで中国にあることを強調する発言が中国政府から際立っており、中央政府の香港への締め付け強化は本音が透けて見える。

 中国政府の出先機関トップである駐香港中央連絡弁公室(中連弁)の張暁明主任は9月12日、「香港行政長官は中央政府の下にあり、行政、立法、司法の三権を超える特殊な法律的地位にある」と述べ、香港での三権分立を否定。昨年6月、中国国務院が初公表した「一国二制度白書」で、「中央は香港に対して全面的な統治権を擁する」「高度な自治は完全な自治ではなく自治権は中央が授権する範囲に限られる」との解釈をさらに一歩進め、高度な自治は中央から干渉される「一国二制度」形骸化の印象を強めている。

 民主派は路線対立が出始め、中国政府との対話仲介を求める民主党や公民党の民主派議員が一部離党。急進派は香港独立や中国本土排除を主張し、天安門事件追悼集会でも従来の集会とは別の場所でイベントを行うなど分裂気味だ。
 来秋の立法会選挙の前哨戦となる11月22日投開票の区議会(18区431議席・任期4年)選挙では従来の民主派候補以外に急進民主派が独自候補を擁立し、少なくとも14選挙区で競合し、民主党(59議席)など主流民主派は不利な情勢。過去2回の同選挙で民主派は大敗しており、逆に民主派の票が割れることで共倒れになりかねず、親中派は民主建港協進連盟(民建連=136議席)を中心に漁夫の利を得ることで議席増が見込まれている。

 1日、香港で行われた国慶節記念式典では梁振英行政長官が「香港の英語教育充実に誇りを持つべきだ」と強調する一方、式典の外部では香港人民力量が香港独立や中国本土排斥のシュプレヒコールを挙げて活動。

 急進民主派による中国本土からの並行輸入業者排斥運動が活発化し、中国本土観光客が日本や韓国を優先し、香港観光を敬遠する動きもあり、1日からの国慶節(建国記念日)連休も4〜6%落ち込むことが予想されている。急進民主派による中国人排斥の動きは香港観光業界に打撃を与えることになれば、中間派からの反発で支持率が下がりかねない。

 天王山は来秋の香港立法会(70議席)選挙だ。中央政府の提出した重要法案を香港立法会で通過させるには議会の3分の2以上の議席数が親中派、新政府派に必要で、現状では親中派42、民主派26、中間派1、欠員1となっている。

 民主派は24議席以上あれば法案の否決権があるため、現有議席を死守することが不可欠だが、元々、27議席あった議席数が公民党の湯家●(馬ヘンに華)議員が辞職し、現状では議席のない新たな穏健中間派が出現する可能性もある。親中派、新政府派による雨傘運動反対運動の包囲網が広がれば、無党派中間層の潮流次第では民主派が議席を目減りさせて24議席を割り込む危機感も出てきている。

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● プロフィール ●

深川耕字 (ふかがわ・こうじ)

福岡県生まれ。筑波大学第一学群人文学類卒業後、新聞記者を経てフリーランスライター。1997年から10年以上、香港駐在し、中国各地や台湾、マカオなど頻繁に現地取材。一般社団法人・全国教育問題協議会理事。

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