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香港中国情報源

フリーランスライター 深川耕字

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【連載】揺れる香港−各派リーダーに聞く 1: 公民党名誉主席 梁家傑氏

記載日:2014.11.22

対話での解決が最優先/一罰百戒で本音言えぬ親中派

香港行政長官選挙の普通選挙改革をめぐり、制度の民主化を要求する学生ら民主派が幹線道路の占拠デモを継続して40日が過ぎた。デモを継続する民主派と政府や親中派の動きは立法会(議会=70議席)を通してどうなっていくのか、各派の立法会議員などに聞いた。1回目は民主派政党・公民党名誉主席の梁家傑(アラン・リョン)立法会議員。
(聞き手・深川耕字、写真も)

 ――財界系親中派の自由党名誉主席だった田北俊香港立法会議員が中国の国政諮問機関・全国政治協商会議(政協)常務委員会から政協委員ポストを解任されたが、親中派の分裂とみてよいか。

梁家傑 結論から言うと、中国政府が田北俊氏を一方的に首にしたということだ。政協委員という中国の政治的な地位の場合、委員になった財界関係者ですら自由に発言する自由すら失われてしまったということだ。董建華政協副主席(香港の初代行政長官)が北京に行って香港の政協委員が思っている発言内容を中央政府に率直に伝えることすら制限したツケがこの結果につながっている。一人を見せしめにして百人に警告を発した一罰百戒の威圧的処分だ。

 8月31日、中国の全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員会で決定した香港行政長官の普通選挙法案の中身を見ても、2017年の次期行政長官選挙では必ず中国共産党の意向に沿う人物を絶対的に就任させるというのが中国側の暗黙の狙いだ。立候補者を初めから2〜3人に絞ることや指名委員会(1200人)の過半数の推薦がないと立候補すらできない親中派の意のままの候補者選びは民主的な普通選挙とは決して言い難い。

 ――香港立法会(定数70)は民主派議員が27人いて議会の3分の1を上回っている。法案通過には議会の3分の2以上の賛成がないと通過できないわけだが、中国の全国人民代表大会常務委員会で決まった香港の普通選挙改革法案は香港立法会で通過できるか。

 民主派議員はすべて反対を表明しているので必ず阻止する。

 ――確実に廃案になるということは、2012年の行政長官選挙と同じ旧態依然たる選挙方式のままになってしまうが、民主派議員団はそれで良いとの共通認識なのか。

 2012年の選挙システム通りになる。全人代常務委員会での決定内容のうち、どう見ても民主的な普通選挙とは認められない3項目について、不満があっても香港政府は中国政府にはっきりと意思表示できない。田北俊氏のように、少しでも背けば解任され、イエスマンだけが香港トップになる資格があるということになる。2008年にノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン米プリンストン大学教授は香港の低所得者層への政治的発言力を抑制するのは成熟した経済体制下の香港にはふさわしくないとの見解を述べ、梁振英行政長官の発言を批判している。梁行政長官の発言の端々に香港への理解不足が露呈しており、香港トップにはふさわしくない。

 ――香港の路上占拠デモは、学生主導で継続した方が良いか。学生側代表は民主派の立法会議員へ主導権を移した方が良いとの意見もあるが、どうか。

 1990年に香港基本法(ミニ憲法)が成立し、香港市民は英国の二等公民から中国本土と同等の公民になる期待があったが、一国二制度の矛盾が噴出して今回のデモに発展した。学生団体と政府の対話は双方の立場の違いから遅々として進まない。学生側はデモの規模をコンパクトに縮小してでも政府との対話で意見が反映できることを最優先にすべきだ。15〜25歳の若い世代が努力しても貧困から脱することは返還前に比べて極めて困難になってきている。香港政府、中央政府は今回の問題をうまく処理できなければ若年世代の政府への信頼が失墜することになる。香港政府が対話する窓口としては香港大学生連合会(学連)に絞って交渉しており、他の学生団体を相手にしていない。

 ――親中派は占拠デモに反対する署名活動を約180万件、獲得している。民主派は民意を得るために、今後、どのような活動を展開していくべきか。

 台湾が国民党系と民進党系で二分されているように、香港では市民の半分が雨傘革命に賛成し、半分が反対している構図だ。香港政府リーダーが今回、知恵を使ってうまく治めなければ、反政府活動がさらに拡大し、3〜4年は不信と不満で港人治港(香港人が自ら香港を治める)が困難になる。中国共産党が香港のキングメーカーとなる指名委員会の人事権に、香港の有権者の意見が反映できるように下に降ろさないと、北朝鮮で有権者がすべて金正恩第1書記に投票するようなものだ。


【取材メモ】占拠デモが1カ月を過ぎ、金鐘(アドミラルティ)の占拠デモ現場で夜遅くまで学生らが集会を開いている時、テントでじっと意見を聞いているのは梁家傑議員のみだった。2007年の行政長官選で民主派候補として立候補した民主派のまとめ役。黄色のネクタイ、黄色のリボンを雨傘革命支持の象徴として着けている。

【梁家傑】1958年、香港生まれ。香港大学卒業後、英ケンブリッジ大で法学修士号取得。香港弁護士会会長などを経て2004年から立法会議員。06年、民主派政党の公民党から行政長官候補に推薦され、翌年、正式立候補したが曾蔭権氏に敗れた。公民党名誉主席でカトリック教徒。






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